伝統の味と食文化を守る金融マン 「絆」重視、地域密着の第一勧業信用組合

新型コロナウイルスの感染拡大で最も深刻な打撃を受けた中小企業、なかでも事業規模の小さい飲食店は自粛が緩和される中でも苦境から脱却できずにいる。長い歴史を誇る老舗や、地元に愛される伝統の味を守ってきたお店も少なくない。日本の文化や伝統の継承者ともいえる中小店舗の経営者にとって頼りになる存在が、地域密着・相互扶助を理念とする「信用組合」だ。
第一勧業信用組合(東京都新宿区、以下第一勧信)の新田信行理事長は、新型コロナで大きなダメージを受けた飲食店、中小企業の苦境を目の当たりにした。緊急事態宣言が解除された直後の6月はじめに、新田理事長に、現状分析と今後の取り組みについて話を聞いた。
▽お客がいない店
国内で新型コロナウイルスの感染が広がり始めた3月初め。新田理事長は「これはとんでもないことになる」と直感したという。融資先の状況把握をしようと、すぐに信用組合内にプロジェクトチームを立ち上げ、全役員が手分けして見舞金とマスクを持って融資先を回った。新田理事長自身も3月下旬に銀座の飲食店を訪ねた。普段は予約が取れない店も、行ってみたらお客が自分1人。緊急事態宣言前で店は開いていたが、予約はすべてキャンセルという状態を見て、影響の大きさを実感したという。他の事業者も同じような状況だと思うと「夜、布団に入っても社長さんたちの顔が浮かんだ」という。
下町の人気うなぎ店も、3月中の予約は100%キャンセル。リーマン・ショック、東日本大震災を上回るコロナ禍をどう乗り切るか―。新田理事長は「単に資金を貸すことだけではない。大事なのは売り上げを立てることだ」との思いを強くし、顔面蒼白だった老舗うなぎ店の経営者に「うなぎ弁当」を作ることを提案、すぐに10人前を注文し、別のお客や組合員に配って自ら営業の先頭に立った。
▽人気レストランにもキャンセル
信用組合は、地域の中小企業・中小事業者が出資して「組合員」となり、組合員の利益のために融資などを行っている金融機関だ。全国信用組合中央協会(全信中協)によると、2019年3月末現在、全国で146組合が地域で活動している。第一勧信は都内に22支店と4出張所を持ち、融資先事業者は約5000社。今回、その役員・職員への資金繰りについての聞き取り調査を実施したところ、半数以上から資金繰りの相談があったという。
東京・日比谷にあるフランス
情報元サイト:「OVO」
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