2024年度の社会保障予算の内容と過程を問う(下)-少子化対策の余波で作られた「改革工程」の実効性と問題点

■要旨
2024年度政府予算案が1月26日召集の通常国会で本格的に審議される。2024年度社会保障関係予算を考察する3回シリーズの(上)では、政府予算案の全体像を俯瞰したほか、歳出の約3分の1を占める社会保障費のうち、医療機関向けの診療報酬本体と、介護事業所向けの介護報酬、障害福祉サービス事業所に対する報酬が6年ぶりに見直された「トリプル改定」の結果や過程、その意味合いなどを概観した。
その後、(中)では2023年12月に決まった「こども未来戦略」を基に、岸田文雄政権が重視する「次元の異なる少子化対策」の内容とともに、財源対策の概要や問題点を取り上げた。
今回の(下)では、少子化対策の財源を確保するため、2023年12月に作成された「全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)」の実効性や問題点などを考察する。具体的には、2023年12月に決まった少子化対策の枠組みでは、約3.6兆円に及ぶ財源のうち、最大で約2兆円を社会保障の歳出改革で賄うことになっている。このため、もし改革工程が実現できなければ、実質的な国民負担を増やさないという政府の説明は画餅に帰すリスクを孕んでいる。
しかし、改革工程の内容や策定過程を見ると、与党や関係団体との細かい調整や合意形成を経た形跡が見受けられず、実現できるか疑わしい状況だ。そこで、(下)では改革工程の内容や策定過程とともに、その実効性や問題点を検証する。
■目次
1――はじめに~少子化対策の余波で作られた「改革工程」の実効性と問題点~
2――少子化対策の余波で作られた改革工程の位置付けと概要
1|改革工程の位置付け
2|改革工程で掲げられた3つの分野
3――改革工程の内容(1)~働き方に中立的な社会保障制度等の構築~
4――改革工程の内容(2)~医療・介護制度等の改革~
1|前期高齢者財政調整の報酬調整などを規定
2|2028年度までに介護保険改革に取り組む方針を規定
5――改革工程の内容(3)~地域共生社会の実現など~
6――改革工程の評価
1|見当たらない新味性
2|泥縄式で作られた?
3|最大で2兆円も削れるのか?
4|政府の説明には早くも綻び?
7――おわりに2024年度政府予算案が1月26日召集の通常国会で本格的に審議される。2024年度社会保障関係予算を考察する3回シリーズの(上)では、政府予算
情報元サイト:「株式会社ニッセイ基礎研究所」
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