明海大学不動産学部/不動産の話題[26]〈単一空間の可変性〉

学生と教員の見方/行政の後押し/居住環境整備の指針と条例/港区の場合/乾式工法で開口設置が容易に【学生の見方&考え方】(3年 市川浩貴) 高額投資用不動産が特に集中している東京都では、開発業者の利益を追求する活動により、比較的小規模な住宅をもつマンションが建設されてきた。これは居住水準の持続可能性の面で疑問が残る。これに対し、港区では1985年から「港区共同住宅の2戸1化設計指導指針」を設けることで解決を図る動きがあった。概要としては、中高層共同住宅の50平方メートル未満の住戸に対して、建築当初から2戸1化、3戸1化、3戸2化にするなど容易に改造できるように設計上事前に対処するよう指導するとある。これにより、少子高齢化などで縮小化する不動産業界の問題に、良好な住宅ストックを形成するという対策ができる。 近年東京の不動産に対する海外投資家の関心の高さを耳にする機会がある。この指導を受けた住宅が増えているのではと思い、この指針が生かされた形跡のある住宅を探そうとしたが、手がかりさえ見つからなかった。これはあくまでも指針であり、法的拘束力を持たず、開発業者にとってメリットが見出しにくいのだろう。 なお、2005年より「港区単身者向け共同住宅等の建築及び管理に関する条例」と法的な拘束力が生じるものが別に施行された。小住戸の整備を複数住戸の連結に限定せず、対象や基準などをより細やかに規定し、協議などを挟むことで行政の介入を図るものである。 これらの規制が誕生した背景には、本来自由な不動産市場とそれが行きすぎた時の混沌とした都市開発の形成がある。規制に不自由さはあるものの、長期的な観点からはサステナビリティを持った居住環境の形成につながるだろう。【教員の展開】(前島彩子准教授) 2戸1化改造を推し進める制度的な枠組みとして、港区や大阪市には共同住宅の2戸1化設計指導指針が設けられている。狭小住宅は長期的にみると、居住水準の改善を目的とした転出や借家化、空き家化の問題をかかえ、地域的な生活環境にも悪影響が懸念されるものである。ワンルームマンションの急増が問題視された東京都区部においては1983年に狭小住宅開発に対する指導が始まった。2戸1化設計指導指針はこうした動きのなかで整備されたものと捉えられているが、いわゆるワンルームマンション規制が開発時の誘導策である
情報元サイト:「週刊住宅タイムズ」
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