予見可能性の高いエネルギー基本計画・改定はできるのか?
日本の中長期的なエネルギー政策「エネルギー基本計画(以下、エネ基)」の見直し議論が、今年、本格化する。安全保障と気候変動対策を両立するため、再生エネルギー(以下、再エネ)と原子力を増やし、火力を減らして電力供給の安定を確保しながら脱炭素化を推進する。エネ基の改定は3年に1度。2021年10月に閣議決定されたエネ基では、太陽光や風力など再エネ電源を倍増し、主力電源化へ「最優先の原則で取り組む」としたが、大きく前進したとは言い難い。2030年計画は絵に描いた餅となっている[図表1]。
今回の大きなポイントは2つある。1つは、原発の再稼働と再エネの拡大に向けて、具体的な策が出て来るか否か。日本全体の出力問題からすれば、設置変更許可を受けた原発5基のうち、出力の大きな新潟柏崎の再稼働に目途が立つかは大きなポイントである。経済産業大臣が地元の同意を取り付けるため、再稼働について発言を始めている。新潟柏崎の再稼働が今年決まれば、2012年3月以来、約12年ぶりの稼働となる。もう1つのポイントは、火力の比率を下げるために欠かせない再エネの普及ペースである[図表2]。今のところ、太陽光を中心に良いペースで進んでいるが、計画対比で遅れが目立つ風力や地熱を、如何に拡大できるか。順調に見える太陽光も、大規模発電で採算が見込める平地などの適地では設置が進んでいて、ここからペースを維持していくには、住宅への太陽光パネルの設置が必要になる。ただ、大量導入には住宅の耐震補強などが必要で、追加の支援策がもう一歩も二歩も必要になっている。3年前から世界は大きく変わっている。ロシアのウクライナ侵略からエネルギーの確保はより困難になった。そのような情勢の中で日本が潜在成長率を高め、企業が市場からもう一段評価を高めるためには、エネルギー戦略が極めて重要になる。コストの面から言えば、電気などが海外に比べて高いことは、島国でありエネルギーを海外に依存している日本の構造を考えると、ある程度やむを得ない面がある。ただ、将来の予見可能性が低い状況は是正すべきだろう。企業は将来のビジネス環境の見通しが立てば、その中で最適解を出すことができる。予見可能性が低い状態では、身動きが取れず、リスクを避けるために消極的になってしまう。日本企業は、そうでなくても消極的だ。少なくても、国は企業の消極姿勢を加速さ
情報元サイト:「株式会社ニッセイ基礎研究所」
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