エンゲージメント活動はリターンを生むのか?

2014年2月に策定されたスチュワードシップ・コード(以下、SC)は、企業の持続的な成長を促す観点から、機関投資家が受託責任を果たすための原則として設定された。SCは、2017年5月と2020年3月に改訂され、運用機関における議決権行使に係る賛否の理由、自己評価、情報提供の充実、ESG要素等を含むサステナビリティを巡る課題に関する対話などの項目が追加されている。SCに賛同する企業年金基金の数は、2018年までは14に留まっていたが、2019年に35、2024年3月末時点で51まで増加した。確定給付企業年金の賛同基金数は、全体の約5%程度に過ぎない。とはいえ、今後、ESG、サステナビリティ活動の重要性が高まっていくに従い、徐々に賛同基金数は増加していくことが見込まれる。
 
SCは、2015年6月に適用が開始されたコーポレートガバナンス・コードと対になる形になっており、中長期的な視点に立った建設的な対話を通じて、企業価値ならびにリターンの向上を達成することを実現することを目指している(図表1参照)。SCでは、スチュワードシップ責任を果たすための活動としての有効な手段の一つとして、企業との直接的な目的を持った対話、エンゲージメントが強調されている。エンゲージメントにおいては、企業の経営者と直接的な対話を行い、企業戦略、ESG課題に関する意見交換を通じて、株主総会における議決権行使を通じて、企業の意思決定に影響を与えることが期待されている。
 では、こうしたエンゲージメント活動が、投資先企業の価値を増加させ、リターンを向上させているのであろうか。それを実証した論文はそれほど多くはないものの、いくつか存在する。その先駆的な論文はDimson et al.(2015)1である。Dimson et al. (2015) は、1999年から2009年の期間、アメリカにおける上場企業に対する機関投資家によるエンゲージメント活動がリターンをもたらしているのかを検証している。この研究の特徴は、コーポレートガバナンスを含んだ社会的責任に関するエンゲージメント活動に焦点を当てている点にある。本研究の結果では、エンゲージメントの成功は、企業価値に正の異常リターン(+7.1%)をもたらしている一方で、失敗した場合のリターンはなかったことが確認されている。エンゲージメント成功
情報元サイト:「株式会社ニッセイ基礎研究所」
[ オリジナルサイトで見る ]

関連記事一覧

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。