王様製菓株式会社(東京都)
ムスリムの人たちとのコミュニケーションが生まれるHALAL仕様の「東京あられ」
国産米菓初のHALAL(ハラール)認証を取得したあられです。HALAL(ハラール)とはムスリム(イスラム教徒)にとって「許されるもの」という意味で、食品のみならず日用品や日常的な行為まで広く使用されている言葉です。HALAL認証機関は日本にもいくつかありますが、この「東京あられ 海苔」は「日本アジアハラール協会(NAHA)」の認証を取得。ムスリムの方が好む“甘い醤油”味に仕上げているのも特徴です。
日本的な味をベースとしたHALAL商品
なんと1960年代から、おかきの輸出を手がけていたという王様製菓株式会社。当時からしたら、かなり画期的なことです。チャレンジ精神にあふれ先見の明があったのでしょう。 約30年前に飛行機の中で提供される茶菓の入札に参加。そこから航空会社との付き合いがはじまったといいます。
「ある航空会社から、『中東向けにHALALのおつまみを作れないか』と相談を受けたのがきっかけです。しばらく間が空いて、日本政府がインバウンドに注力。HALALを広めてムスリムのインバウンドを呼び込もうという動きが強くなったので、私たちもHALALのお菓子を作ることにしました」と王様製菓株式会社の木村秀雄社長は説明します。
当初はムスリム向けだったので、エスニックな味付けをしようと考えていたのだとか。ところがパキスタンご出身の有識者と意見交換をする中で、ムスリムの人はむしろ日本的なものでHALAL認証のあるものを求めていることを知ったといいます。
「当然、工場の設備投資やライン整備見直しは必要でした。費用もかかり、管理も大変でしたが、なんとか対応できました。そして同時に航空会社に提案すると、丁度イスラム圏むけに便数拡大する時期にあたり、喜んで受け入れてくれました。また、当時インバウンド向けに様々な施策を模索していた台東区や浅草の観光協会に話を持っていくと気に入ってくれて、積極的に販売をしてくれるという話になりました」
一番重要なのは作り手の姿勢
HALAL製品を作るポイントは、工場設備はもちろん、一番大切なのは、作る人の考え方だといいます。
「HALAL製品には酒と豚肉が入れられないのはもちろん、製造過程にも注意が必要です。わずかな量でも混入することは許されないので、設備もしっかりと分けています」
HALALはアレルギーではないので、例えば手を抜いて作っても健康被害はありません。なので信用がとても重要になります。
「従業員が意識して守れるかどうかが重要です。しかし私は100%はないと考えているので、年に一度は監査の方に来ていただき啓蒙してもらっています。はじめは従業員もイスラムという事に対しておっかなびっくりで、なんだかよくわからなかったかもしれません。何度もパキスタンやウイグルのムスリムの方たちからHALALの講義を受けているうちに理解が進み、親しみも持てるようになってきたと思います」
HALAL認証を継続していくには監査にも費用がかかるし、当然、手間もかかります。それでも、ムスリムの人に喜んでもらえる商品を作りたいと木村さんはいいます。
「今、日本にいるムスリムの方で日本食に慣れている人は、当社の商品は高価なこともありあまり買いません。日本食でも原材料を確認して、酒や豚肉が入っていなければそれでOKとしています。しかしお土産とする場合は相手に原材料の確認までしてもらうことは難しいですが、そこにHALALマークが付いていれば、もらった方も安心できます。日本のおかきの魅力をムスリム圏に知ってもらう良い機会だと思っています」
東京あられはコミュニケーションツール
非HALALな原料の混入をシャットアウトする工程や製造設備はもちろん、原材料や味にもこだわりを注ぎ込んでいます。
「国産のもち米を一口サイズの食べやすい大きさで、高温の植物油でサックリした食感に揚げております。しょう油をムスリムの方々が好む甘さに調合。仕上げに海苔をふりかけています。また、グルテンフリーにも対応し大豆と食塩だけで作られた“たまりしょう油”を使用しています、同時にビーガンの基準も満たしました」
コロナ前には航空機内で提供されていたため、あまりの美味しさに、そこで食べたムスリムの方がパッケージを持って店舗まで買いに来ることもしばしばあったといいます。
「これはキャビンアテンダントさんから聞いた話ですが、搭乗してからお菓子を出すものの、これまではムスリムの方は“何が入っているのか分からない”ので食べられなかったのですね。そうするとムスリムの方は、飛行機に乗って最初の食事が出るまでは何も食べないことになります。ところが、このお菓子ができてからは、手渡すことでコミュニケーションが生まれるようになったと、喜んで話してくださいました」
シンプルだからこそ世界で愛され続ける
この商品の特徴は、原材料が比較的シンプルで、アレルギーの問題がない点にあります。
「結局、うちの売れ筋商品の原材料は昔から、米と植物油と塩です。流通やマーケティングを考えると、徹底的にコストダウンしたり、色々な化学調味料を使ってその時々はやりの味を作ったり、日持ちをさせることに考えが向いてしまいます。もちろん、そういった商品もありますが、先にそちらの方向に行ってしまうと“何でもあり”になってしまいます」
また、米の産地などにもこだわりすぎると不作の年に困るので、こだわりすぎは良くないと言います。
「それよりは、どんなお米を使っても同じように作れる技術を守っていきたいですね。ただし、原料米は国産に限ります。日本の農家の皆さんが丹精に作られたお米のしずる感とぬくもりは大切にしたいと思います」
限りなくシンプルだからこそ、ここまでグローバルで愛される商品へと成長したのかもしれません。
「この商品に限らず、世界中の人々から“面白い”と思っていただけるような製品を作っていきたいですね」
コロナ後を見据え、東南アジアを中心に新たな輸出商談も始まっており、来年にはマレーシアの店頭に「東京あられ」が並ぶことになっています
今回ご紹介した企業
王様製菓株式会社(東京都台東区)
創業は大正13年。関東大震災後に、新潟出身の先々代が商売をするために東京に出てきたのがはじまりです。以来、「造ること」にこだわり、「基本的な商品は自社製造」という考えのもとに、おかき造り一筋でやってきました。1960年からアメリカへの輸出をスタート。飛行機内で提供するお菓子についてはもう20年近くやっており、ニッチなマーケットではありますが日本のおかきの魅力をグローバルに伝え続けています。
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