株式会社 寿徳庵 (東京都)
おこわ専門店としての自負と探求心―「手づくり蒸籠おこわ 3種6個入」
「寿徳庵」は昭和54年に東京で創業。今ではおこわ専門店の第一人者として、空港にも店舗を構えています。
「おこわだけで勝負できるものを作りたい」との強い想いで作ったのが、今回ご紹介する「手づくり蒸籠おこわ 」中の1つ「松阪牛おこわ」。「手づくり蒸籠おこわ 」は、同社の冷凍おこわの原点「松阪牛おこわ」に、華やかな「吹き寄せ」とふっくらした「穴子」をセットにしました。
おこわを1つの料理に、しかも手軽な形で
セット中のおこわの1つ「松阪牛おこわ」は、同店が冷凍おこわを開発しそちらのジャンルでも第一人者となる記念すべきスタートとなった一品です。
当初はおこわのお弁当を販売していた同店。羽田空港の空弁としても販売していた2007年のお話です。今でこそ肉を使ったおこわを見かけるようになりましたが、当時はまだありませんでした。
「やるからには日本一有名な牛肉を使いたい、と松阪牛のおこわ作りを決めました」
同社で専務を務める岡田さんはいいます。間違いのない素材を仕入れるため直接産地へ赴き、生産者の方にお願いしたそうです。今も生産者の方から直接送ってもらってよい素材を確保しているとのこと。
そして試行錯誤を重ね松阪牛のおこわが完成。人気を博します。今でも羽田空港で人気となっている冷凍ではない「ひとくちおこわ」の誕生です。
そして時は経ち、冷凍おこわを開発する直前。当時、おこわを美味しく食べてもらう機会をどうやって提案できるか?を深く考えていたといいます。具・味付け・ボリュームすべての点でおこわを1つの料理として完結させること、温めるだけで食卓に上げられること、おもてなしやギフトにも使えること。すべてを満たす商品を作りたかったのだといいます。
そこで、人気となっていた松阪牛おこわ弁当を冷凍にしようと思い立ちます。しかし、今ある商品をただ冷凍すればいいというような、単純な話ではありませんでした。
おこわ好きな人にこそ試してみてほしい
そのままいただくおこわのお店としては実績のある同社でしたが、冷凍のおこわとして納得いくものができるまで2年かかったそうです。「冷凍でもここまで美味しいんだ!」とわかってもらいたいので、ぜひおこわが大好きな方に食べてほしい。そう岡田さんは話します。
「うちが一番得意なのは、実は白いおこわなんです。材料はだしと塩とお米だけ。原材料が美味しくないと美味しくなりません。好きな方には違いがわかってもらえると思います」
ベースとなるおこわが美味しいのなら、美味しい素材を加えれば絶対美味しくなります。逆にベースが美味しくなければ、美味しい素材を加えてごまかそうとしてもわかる人にはわかってしまうのでしょう。
そのように本格的なおこわですが、身近なものとして毎日の食事に取り入れてほしいと岡田さんは話します。おこわは主食の米とおかずとなる食材が1つになったもの。腹持ちもよく、食材のバリエーションの数だけ色々と楽しむことができます。一人暮らしや忙しい人などに、温めるだけで美味しいおこわを食べてほしいそうです。
美味しいと思った方が、贈り物として購入することも多いそうです。家族に贈る方も多いのだとか。それは気取らないけれども美味しく食べられるものならではのことでしょう。「贈った方に喜ばれるのでギフトに利用しているんです」と言われると嬉しい、そう話します。
おこわへの飽くなき探求心
同社はすでにおこわ専門店として不動の地位を築いています。それでも今なお、その探求心は消えるどころかとどまるところを知りません。
「美味しいものはだしと調味料で決まると思います」
だしには北海道羅臼産の昆布など厳選した素材を使用。酒やみりんなどの調味料にもこだわっています。もちろん食材にも隅々まで気を配ります。米は100%もち米を使用。当初は新潟の最高級品種「こがねもち」だけを使っていたそうです。しかし粘りが強いため、冷凍調理だと少し重たく食べにくくなってしまうのだそう。そこで今ではブレンドしているといいます。
さらに具となる食材も産地を指定。いくら美味しくても、冷凍すると美味しくなくなってしまう食材もあるのだそうです。1つひとつ試作して冷凍向きの食材を見つけていったといいます。
そして調理の過程にもこだわりが。仕込みから盛り付けまですべて手作業で行っています。中でも他社にはないこだわりが蒸篭(せいろ)。同社では、業務用としては扱いにくい木製の蒸篭を使用しています。
しかし味のことを考えると、木製は外せないといいます。木が余計な蒸気を吸ってくれたり温度を調整してくれたりするのだそうです。しかも同社で使用しているのは桧(ひのき)の仲間「さわら」で作った蒸篭。熟練した職人さんが香りよく仕上げています。
そして冷凍技術。冷凍・解凍して食べることを前提に試作を何度も何度も重ねたそうです。しかし、やはりそこは企業秘密。1つ教えてくれたのが包材について。レンジで加熱・解凍した際に蒸らせるような包材を作ってもらったり実験したりしたそうです。
味だけではなく、見た目にもこだわりました。セット中の1つ「吹き寄せ」は華やかで美しい盛り付けの一品ですが、冷凍・解凍するとなかなかキレイに見えなかったそうです。それがうまく行ったときは「これなら大丈夫!」と思えた瞬間だったといいます。
おこわ専門店としての自負とめざすもの
同社の試行錯誤は今も続いています。現在の地位に驕ることなく、絶えず進化をめざして工程や食材の見直しを重ねています。
気持ちを入れて作っているし、素材もこだわっている。よそがひと手間で作るところを手をかけて作っている。手をかけているものは美味しいと思う。そう話します。
それでも岡田さんは、「『おこわ専門店』がお客さまにどのぐらい伝わっているのか、自分たちの自己満足ではないかと思うことも多々あります」と胸の内を明かしてくれました。
しかしおこわ専門店として特化してやっていくと決めた時に、素材選びをはじめあらゆる点で変わったのだそうです。どういうものを作りたいのか・何を残していきたいのかというのが明確になり、おこわに対してぶれなくなったといいます。
おこわが日本人の間で忘れられ、おこわを食べる場や機会・時季といった文化ごと失われつつある。もしおこわが面倒な手をかけずに食べられるようになれば、おこわのある生活や文化は残るだろう。そして美味しいと言ってもらえるおこわを作ることが、それにつながると思っている。岡田さんはそう話してくれました。
その想いはお客さんに伝わっています。こんなエピソードを教えてくれました。
あるとき、お店におこわを買いに来た女性がいました。女性のお父様が亡くなってしまい、初七日にお供えするためにと来店したそうです。亡くなる前の半年はこちらのおこわしか食べられなかったんです、そう女性は話してくれたのだといいます。
余計な味のしない、素材を活かした自然で優しい味だからこそ、体調が悪くてもお父様は食べることができたのでしょう。そして看病の合間でもさっと用意できるからこそ、その女性も食べ続けてもらうことができたのでしょう。
おそらく商品を作る側からすると、受け取る側の想いは知る機会が少ないもの。それが伝わったときは、万感の想いが呼び起こされるに違いありません。それは提供し続けている当事者にしかわからないものでしょう。
しかしお話を聞いていて、少なくとも同社では、お客さんの気持ちを受け止めて、これからも絶えず「もっと美味しくする方法はないか」と考えながらおこわを提供し続けていかれるのだろう、そう思いました。
今回ご紹介した企業
株式会社 寿徳庵 (東京都目黒区)
昭和54年東京都で創業、「京風 四季のおこわ」のお店としてスタート。羽田空港の空弁としてその名が全国的に知られるようになります。その後もこつこつと細かい努力を積み重ね、現在の地位を築きます。その後冷凍おこわを開発、そのジャンルの先駆者として今もその立場は揺らぐことがありません。努力を続けてお客様に喜んでいただけるおこわを伝えていく姿勢は創業時のまま。これからもそこは変わることはありません。
産直お取り寄せニッポンセレクトへ移動します
この記事へのコメントはありません。