GX経済移行債のグリーニアムの発生要因
2023年5月に成立した「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行推進に関する法律(GX推進法)」に基づいて、今後10年間にわたって20兆円規模の「脱炭素成長型経済構造移行債(GX経済移行債)」が政府から発行されることになった。国債としてGX経済移行債が発行されるのは世界で初の事例である。政府は、温室効果ガスの削減目標として2013年度から2030年度にかけて46%削減することを目指している。政府が2023年2月に公表した「GX実現に向けた基本方針」では、国際公約の達成、産業競争力の強化・経済成長の同時実現には、今後10年間で150兆円を超える投資が官民で必要との試算結果があり、この問題意識に基づく発行である。
GX経済移行債の個別銘柄として「クライメート・トランジション利付国債」が発行され、2024年2月14日に10年債で初の入札が行われた。発行に際して、市場では「グリーニアム」がどの程度生じるのかが注目された。「グリーニアム」とは「グリーン」と「プレミアム」を合わせた造語であり、同じ発行条件の債券と比べてESG債の利回りが低くなる(価格が高くなる)現象を指す。海外では、2023年10月にEUの欧州証券市場監督局(ESMA)が「ESG債のグリーニアムは理論的には確認できない」とする調査結果を公表するなど、グリーニアムの発生を疑問視する指摘もみられるようになってきている。2024年2月時点で、10年債は償還日が同じ10年利付国債(373回債)との比較で、発行市場において0.5bp程度、流通市場において1~3bp程度低い利回りで取引されている。その後、2024年2月27日に発行された5年債では、償還日が同じ5年利付国債(165回債)との比較で、発行市場において1.5bp程度低い利回りで取引されたが、流通市場ではグリーニアムは発生していない。
債券利回りのプレミアムは、クレジットリスクや流動性リスクなどを主な源泉として発生すると考えられている。GX経済移行債には資金使途の制約はあるものの、同じ日本政府を発行体とする利付国債とクレジットリスクに違いはない。つまり、グリーニアムが今回発生したのは、流動性リスクの観点でその評価に違いがあることが主な要因ではないかと考えられる。具体的には、クーポンレートの違い、日本銀行のオペの取り扱い、発行額の規模、SDG
情報元サイト:「株式会社ニッセイ基礎研究所」
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