デカボグランプリに鈴廣ほか 食の循環や脱炭素行動評価

『森が消えれば海も死ぬ』(講談社)の著者、松永勝彦さんの講演を聞いたのは1990年代。魚介類を育む森林の大切さを説く松永さんの話を、門外漢の記者とは異なり、講演を企画した会場の漁師たちが真剣な表情で聞いていたのを思い出す。
この漁師たちは当時発表された地元での原発計画に反対しており、日ごろから海の環境を守る意識が極めて高かった。今でこそ、頻発する土砂崩れを背景に保水など森林の多面的役割が注目されるが、漁師たちは日々のなりわいの中で、魚介類の生息に必要な養分を海に提供する森の重要性にいち早く気付いていた。当時、東北地方には山に木を植える漁師もいた。
自身のなりわいや生活の中で自ら気付いた環境問題への取り組みは、おのずと掛け声倒れに終わらない、持ち場に根を張った、息の長いものになる。
その好事例が、4月22日に開かれた脱炭素の優れた事業・活動をたたえる、第1回デカボアワード授賞式(主催・アースハックス)のソーシャルインサイト部門でグランプリを受賞した、鈴廣かまぼこ(神奈川県小田原市)の取り組みだ。
鈴廣かまぼこは1865年創業の老舗。魚を使うかまぼこの製造販売会社として、生産活動に伴う環境への負荷をなるべく減らす取り組みを長年続けてきた。かまぼこ製造時に出る魚のあら(骨、皮、内臓)を肥料にして大地に還元する「食の循環」や、創エネ・省エネの「脱炭素」が取り組みの主な内容だ。「1本のかまぼこを作るためには約7匹の魚を使う」からこそ、海などの自然環境を維持する努力を昔から地道に積み重ねてきた。
「自然のものを使ったら、きれいな形にして最終的に自然に返したい」。鈴廣かまぼこ業務改革部次長の廣石仁志さんは、食の循環の取り組みで目指す理念をそう話す。
鈴廣かまぼこは、かまぼこ製造時に不要となる魚のあらを捨てずに再利用して肥料「うみからだいち」を作り、コメや野菜、果物を栽培する地元農家らに提供する。併せて森に木を植える森林保全活動もしている。
廣石さんは「森林保全や肥料による土壌の改善は、海の環境を良くすることにつながります。土壌の養分が川や地下水に浸透して海に流れ込み、魚の餌となるプラクトンを育てます。その豊かな海の恵み(魚)を使って、われわれはかまぼこを作るのです」と循環の必要性を強調する。かまぼこ作りを、海、川、山、農地など周囲の環境とのつながりの中で捉え、
情報元サイト:「OVO」
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