株式会社 堀 (高知県)

現状打破への意志とさまざまな縁から生まれた商品― 「リサ・クラシック」と「リサ・トマトケチャップ

高知県高知市にある「株式会社 堀(おかざき農園)」の「リサ・クラシック」と「リサ・トマトケチャップ」は、きわめて糖度の高い自社栽培のフルーツトマトから作られたトマトジュースとケチャップです。太平洋を臨む海岸線にある農園で、たっぷりの日差しを浴びて育ったトマトから作られた濃厚な味が楽しめる逸品です。

高知県でトマト?フルーツトマトの栽培とジュースを作るに至るまで

高知県で有名な農産物と言えば何をイメージするでしょう?なすやにらは思いついても、トマトの印象は正直なところあまりないのではないでしょうか。

確かにトマトの生産量は国内で22~23位ぐらい。しかしことフルーツトマトに限定して見ると、国内売上No.1だといいます。実は高知県はフルーツトマト発祥の地なのです。

株式会社 堀の代表取締役・岡崎秀仁さんは、もともとマスクメロンの栽培を行っていました。しかしフルーツトマト栽培で有名な友だちの存在もあり、品目を変えるならフルーツトマトと思っていたといいます。

そしてお子さんが進学するという頃に嗜好品の売上が低迷、メロンも苦戦するように。より安定的に収穫できて収入が得られるトマトに切り替えることを決断、栽培を始めます。

それから5年ほど経った2008年。岡崎さんは悩みを抱えていました。

春先にトマトの実が柔らかくなってしまうのです。消費者の手元に届くまでを考えると、実が固いうちに出荷しなくてはいけません。高知県は栽培の環境としてはよい場所ですが、流通面では不利な面があるのだといいます。

味は問題なく甘くて美味しい。何とかしたい。そう思った岡崎さんは、県の工業技術センターに相談します。そしてそこで勧められたのがトマトジュースへの加工。奥様がジュニア野菜ソムリエの資格を取得した翌年のことでした。

導入費用の想定外のオーバー、予定していた取引先すべてが破談になるなどのトラブルを乗り越え、同社初の加工食品・トマトジュースが誕生。翌2009年には岡崎さんご本人もジュニア野菜ソムリエに。ジュースを皮切りに、さまざまな商品を開発していきます。

美味しいトマトだからこそ美味しい加工品になる

2つのケチャップも、人との縁で生まれました。

県内のホテルの料理長から、グリーントマトを作ってくれないかと打診がありました。翌年には別のホテルの料理長から黒トマト栽培のオーダーが。それをきっかけにいろいろな品種を栽培するようになりました。

そしてソース類を作っている工場の工場長から、いろいろな色のケチャップ製造の提案を受けます。そこでグリーン・イエロー・黒の3種のトマトからケチャップを試作。どれも驚くほど美味しかったそうです。

すぐに有名百貨店で採用されますが、一番美味しいと思った黒トマトのケチャップは不採用に。有機トマトのケチャップと見た目が似ていて、特徴を打ち出しにくかったからだそうです。

あんまり美味しいので、商品化しないのは惜しい・世に出したい。そう思い、味の対比ができるレッドと2種類で販売することを決めます。2010年のことです。実は黒トマトは美味しいのになかなか売れませんでした。奥様から「道楽はこれぐらいにして、そろそろ売れるものを作らなくては」と話が出た矢先のことだったのだそうです。

ジュースもケチャップも、食にこだわる方にこそ食べてほしいと話します。トマトジュースは、苦手という方にこそ試飲してもらっていたそうです。そしてその8割が、これなら飲める・これは美味しいと驚いたといいます。

「経験から来る自信はありますね」と岡崎さんは微笑みます。

奇をてらうことのない手作りへのこだわり

今もトマトジュースは奥様と2人で加工しているのだそうです。塩も砂糖も、水すらも加えません。使う機械は種と皮の分離機1台だけ。13年間ずっと手作りを続けてきました。これからも同じです。

1回の作業は5時間。それで66本しか作ることができません。

傷みにくくなるよう85度で加熱、ジュースの中の空気を抜く「脱気」を行います。温度が高過ぎると焦げてしまいます。温度に気を使いながら、85度のトマトジュースを30分間付きっ切りで混ぜ続けます。

「今の時期なんて地獄ですよ」

岡崎さんは苦笑します。

それでも機械を入れることは一切考えていません。機械なら、今よりも楽に大量のジュースを作ることができます。しかし機械にはコストがかかります。それを回収するにはできあがったジュースを売り切っていかなくてはなりません。そうなるとそちらに手を取られるようになって味が犠牲になってしまう、と。

高知県版HACCPの認証を受けており、その手順に忠実に1本1本作っています。企業秘密などあったらそこは書かないようにしますよと言うと、「とくにないから大丈夫です」と岡崎さんは笑いました。それは逆に言うと、原料も手間も、わかったところで真似のしようがないということを意味しています。

ケチャップも、レッド・ブラックともに素材の味で勝負しています。ブラックは香辛料を若干強めにきかせて大人向けに、レッドは糖度7度以上のフルーツトマトから製造。どちらもケチャップのイメージを覆すような濃厚な味わいです。見た目からして、一般に流通しているケチャップとはトマトの素材感がまったく違います。

トマトそのものの味へのこだわりを伝えたい

美味しいトマトジュースやケチャップができるのも、糖度の高いトマトを惜しげもなく使うからこそ。トマト特有のちょっと青臭い感じが全くないのだそうです。星形のスジ「スター」が入っているのが糖度の高い証。栽培の途中の色の変化でその時々の糖度がわかるといいます。

ケチャップの製造をお願いしている工場の工場長も、原料が違うから味が違うと言うそうです。トマトが美味しくなければ、ジュースもケチャップも美味しくなるはずがありません。

しかも専門機関に調べてもらったところ、トマトジュースに含まれるGABAの量が通常より多いことがわかりました。機能性食品として認可を受け、美味しいだけでなく身体にいいということも立証されました。

口に入るものだから、農薬も最小限。人間に例えるなら、予防注射レベルしか使用していないそうです。

岡崎さんは静かに語ってくださいました。

「青果の味が一番だと思っています。美味しい加工品は、青果が美味しいから美味しいんです。加工品は青果の引き立て役だと思っています。味のレベルは高めに設定してやっているので、味へのこだわりを伝えたいと思っています」

同社のトマトジュースやケチャップのように、食べて美味しく身体にいいという食品が今後ますます注目を浴びていくことでしょう。

商品のご紹介

今回ご紹介した企業
株式会社 堀 (おかざき農園) (高知県高知市)

2006年会社設立、2013年農事組合法人設立。マスクメロン栽培をしていた先代から事業を受け継いだのち、日本一美味しいトマトづくりを目指してトマト栽培に転向。フルーツトマトを中心に栽培中です。会社設立以降、加工品の製造と販売も積極的に行っています。継続可能な農業と高品質の農作物・加工品生産のため、JGAP・高知県版HACCPの認証を受けています。

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