水口酒造株式会社 (愛媛県)

地域振興はもちろん、日本酒の伝統を守りたいから挑戦を続ける。『道後ビール』に込められた老舗造り酒屋の本当の“思い”

「湯あがりビール冷えています」というキャッチコピーを体現する、まさに“湯あがり”というシチュエーションに合わせ、清涼感やのどごしを重視したクラフトビール。126年続く老舗造り酒屋の醸造技術が、湯あがり×日本人好みの味を実現しています。もちろん、四国屈指の名湯・道後温泉本館の“熱めの湯”を想定しているため、一口飲めば旅の思い出が鮮やかによみがえってくること間違いなし。

屈指の温泉地・道後の新たな名物として誕生

屈指の温泉地・道後の新たな名物として誕生

愛媛・道後温泉といえば、誰もが知る四国エリア屈指の人気観光地。日本最古の温泉として知られ、そのシンボルともいえる「道後温泉本館」に古くは、夏目漱石、正岡子規、高浜虚子、種田山頭火など文豪・文化人が訪れていました。その人気は時を超えても衰えることなく、本館のレトロな風情と肌に優しい滑らかな湯質を求め、コロナ禍以前には毎年、全国から年間100万人もの観光客が訪れていたといいます。
その道後温泉本館からほど近い場所に、1895年から営みを続ける「水口酒造」があります。今回ご紹介する『道後ビール』は、この老舗の酒蔵から誕生。その背景には、平成、令和を生きる若者を中心とした“日本酒離れ”の現象があるといいます。
「50年前に比べると、全国の酒蔵の醸造量が3割まで落ちこんでしまい、現在の当主、水口義継が、“このままではいけない”と考え、地ビール免許の取得に動き、1996年から製造を開始しました」というのは、水口酒造 広報・販売推進部の城下雄一郎さん。当時、規制緩和によって生産量による規定が緩和。全国各地で“地ビールブーム”が沸き起こりましたが、『道後ビール』はその先駆けだったと言います。
もちろん、地域振興への期待の中で生まれたという側面もあるのだとか。「平成6年といえば、瀬戸大橋開通の賑わいが少し落ち着いてきた頃。地元旅館の社長などの間で『道後の名物が欲しい』という話が持ち上がったことが、地名を冠したブランド誕生の引き金に。地元の期待を一手に集めて誕生したのが、この『道後ビール』でした」

道後温泉の旅の思い出を想起させる仕掛け

道後温泉の旅の思い出を想起させる仕掛け

道後温泉の名物としてふさわしい地ビールを醸造するため、具体的なお客様像をイメージしながら味わいを組み立てていたという城下さん。「当然、一度は道後に遊びにこられたお客さんがメインターゲットになると考えていました。道後といえば温泉です。私たちは飲食店も経営していますが、当時から道後温泉本館の目の前に店舗を持っていたので、そこをアンテナショップにしようと考えました。本館でお風呂を楽しんだ後、すぐにそこで湯あがりビールを楽しんでもらうことを想定しました」。
そのイメージ通り、実際に一度、現地で道後ビールを飲んだ経験があり、それを思い出しながら自宅で味わうリピーターの注文が大多数を占めるのだとか。さらに道後温泉、ひいては松山や愛媛という地域への郷愁を想起させるため、地域の特産品とのコラボレーションも進めているといいます。
「『道後ビール』8本セットの他にも、ビールを6本にして道後温泉の入浴剤をセットにした商品もあります。また、地元で作っているウィンナーや酒のつまみなど、愛媛の美味しいものを自宅で味わえるセットも用意しています」
お酒には、地産の美味しいものを集めてセッティングする力と役割があります。地域に根ざすお酒や地ビールを造っている会社の責務として、地域の食の魅力をまとめてお伝えしたいのだといいます。
「それで、また道後温泉に行きたいと思ってもらえればうれしいです。地道ではありますが、その中から実際に足を運んでくださる人を一人でも多く増やし、地域活性化に繋げたいですね」

道後温泉とゆかりの深い文化人の名を冠する4種の味わい

道後温泉とゆかりの深い文化人の名を冠する4種の味わい

『道後ビール』のラインナップは全4種。ドイツスタイルのケルシュ、アルト、ヴァイツェン、アイルランドスタイルのスタウトを用意していますが、どのビールも「湯あがりビール冷えています」というキャッチコピーに現れているように、湯あがりというシチュエーションに合わせ、清涼感やのどごしを重視しているといいます。
「道後温泉本館の湯温は43℃。比較的熱めの湯ですね。その湯あがりに飲むというコンセプトで味わい、のどごしを組み立てていきました。例えばケルシュというドイツスタイルのビールですと、ほとんどのメーカーが本場の味わいを持ち込んでいます。ところが私たちのビールは、日本人の嗜好に合わせたうえ、さらに湯あがりに飲むので、すっきり軽い味わいのものを用意しています」
もちろん、創業120年の歴史を誇る造り酒屋の醸造技術もビール造りに生かされています。「少量生産で上面発酵による短期間製造。ひとつの仕込みを1週間以内という期間にスピーディに製造して出荷するので、とてもフレッシュ。また一番搾りの麦汁のみを使用しているため、麦本来の深いコクが味わえます」さらに樽詰めや瓶詰めの際に濾過・火入れを一切行わないため、栄養素が豊富な酵母が入った、身体にも優しいビールになっているといいます。
4種の『道後ビール』それぞれにつけられた“通称”にも注目。道後温泉とゆかりの深い文化人・著名人の名前を冠するというこだわりようです。
「ケルシュの通称は“坊っちゃん”ビール。キレの良さと、さっぱりした味わいが特徴です。アルトには、小説『坊っちゃん』に登場するヒロイン“マドンナ”の名を付けました。カラメル麦芽をたっぷり使った、深みのある色合い、ほのかに甘味のあるビールです。スタウトの通称は“漱石”ビール。コクのある本格的なおいしさが特徴。ヴァイツェンには、正岡子規のあだ名である“のぼさん”の名をつけています。こちらは苦みが少なく、口当たりの良さとフルーティーなバナナの香りが特徴。女性にもぴったりのビールです」

地域の特産品の魅力を発信するための挑戦を続ける

地域の特産品の魅力を発信するための挑戦を続ける

長い歴史の中で育まれてきた醸造技術と強い郷土愛の賜物として誕生し、今や道後温泉はもちろん、愛媛県を代表する特産品として認識されるようになった『道後ビール』。老舗酒造の挑戦はさらに広がりを見せる一方です。その原動力となっているのは、地域の魅力を発信していきたいという使命感だといいます。「ライム、オレンジ、ゆずといった愛媛県産の果汁を加えた発泡酒・道後エールや松山長なす、松山一寸そら豆、瀬戸内の銀鱗煮干しという、松山市指定のブランド産品を使っている焼酎もあります。各自治体の農水担当者、地場産品をPRしたい生産者の方々が我々のところに『うちの美味しいもの使って商品をつくってくれないか』と依頼にきます。私たちが地域のために、新しい挑戦を続けていることを皆さんがご存じなのですね。こういうものを活用して焼酎をつくり、我々の販路を活用することで、愛媛や松山にあるブランド品を各地にご紹介したいと考えていらっしゃいますので、全力でご協力申し上げています」
このような新しい挑戦が可能なのは、既成概念にとらわれない柔軟な発想があるからこそ。水口酒造には、老舗にありがちな偏ったこだわりはまったく感じられません。
「他にもリキュールやスピリッツ、サイダー、甘酒、カレー、化粧水などにも挑戦してきました。まだ造っていないのはワインとウイスキーくらいですね。うちには『暖簾を守るな、暖簾を破れ』という家訓があります。暖簾を守ることはもちろん大切ですが、新しい取り組みにチャレンジしなさいというものですね」
『道後ビール』をつくった当時、「日本酒の量が減ったのはビールのせいなのに、なぜ日本酒のメーカーがビールをつくるのか」という心ない声もあったのだとか。しかし、水口当主は、歴史ある日本酒を守るために新しい挑戦は必要だと、暖簾を守るあまりに伝統ある酒蔵を傾けてはいけないという強い信念があったのだといいます。
「我々が日本酒以外の製品をつくっているのは、この酒蔵をあと100年続けて守っていこうと考えているからです。日本酒の需要が落ちていく中、他の商品で利益を上げていけば続けていくことができる。あくまでも、日本酒を作り続けていくための手段だと考えています」
日本酒の伝統を守りたい、地域の魅力を発信したい。そんな老舗酒造の挑戦に思いをはせながら飲む“湯あがり”ビールのさわやかな味わいが、道後温泉への旅情をかき立ててくれるに違いありません。

       

今回ご紹介した企業
水口酒造株式会社 (愛媛県松山市)

道後温泉本館から歩いて5分ほどの場所にある、1895年創業、今年で126年を迎える造り酒屋です。1894年に開業した道後温泉本館とはほぼ同い年、ともに育ってきました。
代表銘柄は仁喜多津(にきたつ)。名前の由来は万葉集で、額田王が詠んだ句「熟田津(にきたつ)に船乗りせむと月待てば潮もかなひぬ今は漕ぎ出でな」の一節からとっています。瀬戸内海の海の幸の素材の味を引き立てる淡麗の味わいが人気。道後温泉旅行のお土産としても親しまれてきました。2017年には経済産業省「地域未来牽引企業」に選定。母屋は文化庁の国の登録有形文化財に認定。店舗として運営していますし、オーナーも実際に住まわれています。大正初めに建てられたもので、築100年を超えました。現在はコロナで休止となっていますが、積極的に工場見学なども行い、訪れた方々への思い出作りのひとつになればと考え、営業しています。

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