有限会社 宮古マルエイ (岩手県)

時々帰りたくなるふるさとのような味を目指して―中骨取り干山がれい

有限会社宮古マルエイの「中骨取り干山がれい」は、「ヒレグロ」と呼ばれる種類の優しく上品な味が楽しめるカレイの干物です。港まで指定して仕入れる北海道産のヒレグロを、清涼な水をふんだんに使って手仕事で仕上げています。焼いて食べるのはもちろん、煮て揚げてアレンジしても美味しくいただける逸品です。

カレイ、水、技、人…。すべてが集まった

岩手県宮古市の有限会社宮古マルエイは、東日本唯一のカレイの干物専門店。珍しい業態ですが、同地でイカの加工品製造を行う親会社が、島根県の水産会社とともにカレイの干物の会社を設立する話が持ち上がったのがそもそものきっかけでした。1994年のことです。

当時の水産業は季節労働が中心。水揚げがある時期だけに仕事が集中し、魚が獲れない時期は仕事がなくなってしまいます。優秀な職人さんが見つかっても、続けて働いてもらうことができません。また働く側にとっても、仕事がなくなる時期があり生活が不安定でした。

当時親会社ではイカ加工を中心にサンマ・サバ・鮭など盛漁期限定の魚種を扱っていたので、漁獲量の変化に対応できるようイカの他にも通年できる仕事を探しているところでした。そんな折のお誘いで、経験や設備を活かせる干物づくりは「本州の北と南から日本中に販路を広げる」構想で魅力的でした。

もともと岩手県は、青森県と並び干物が食生活に根付いた干物王国。ニーズもあるほか、手間がかかる干物づくりなら通年仕事を創出することができます。働く場所を提供できるという思いもあり、合同会社設立を決めました。

時代は遡り昭和30年代魚市場のそばの鍬ケ崎の加工場が手狭になったので、新工場の建設場所を探していました。おいしい干物作りにはいい水が不可欠です。そこで「遠野三山」の1つの霊峰で、柳田国男の「遠野物語」にも登場する早池峰山(はやちねさん)のふもと、閉伊川(へいがわ)の近くに工場を建設しました。早池峰山は、長い時間をかけて自然にろ過された地下水を蓄えた山。閉伊川はヤマメやイワナが住むほどの清流です。この清らかな水が豊富な地で干物づくりを始めました。

1994年に有限会社宮古マルエイを設立、そして後2001年にのれん分けして独立。カレイの一大産地に近いという地の利を生かし、国産のカレイを使った干物づくりに取り組むようになりました。

焼いても料理の素材にしても美味しい「ヒレグロ」の干物

干物は生魚と比べて下処理が要らずうまみが凝縮されているため、実は素材として使うのにもぴったりです。東北では、味付けを調整して煮つけにするのは定番だそう。そのほか素揚げや唐揚げにしても油跳ねが少ないので調理しやすく、味の面でも香ばしくなって美味しくいただけます。

「中骨取り干山がれい」は中骨が取ってあるので小さなお子さんにも喜ばれています。優しい味でクセがないのでアレンジも利きます。とくに簡単で美味しいのが食材を挟むこと。しそチーズ、甘味噌やばっけ味噌(ふき味噌)などのほか柚子胡椒がおすすめだそうです。食べる直前に大根おろしを挟んでもさっぱりいただけます。そのほかムニエル風にしてパンに載せるのも若い方におすすめだそうです。

「中骨取り干山がれい」に使われているのは「ヒレグロ」と呼ばれる種類。生だとちょっと生臭く水っぽいのですが、干物にすると上品で優しい味に大変身します。「干物にするために生まれたんじゃないか」と思うほどに干物向きのカレイで、「カレイの女王」とも呼ばれる高級魚「ヤナギムシガレイ」にそっくりなんだそう。

ただしぬめりや汚れが多いため、下処理をていねいにすることが臭みの少なさや味の仕上がりに差を生みます。「手がかかる可愛い子」のようなカレイだそうです。

宮古マルエイでは、安定供給できる北海道産をメインに使用。港によって扱いが違うので、目利きで信頼できる買い請け人さんのいる港から仕入れています。

手仕事がゆえに生まれる大きな味の差

同社が干物作りの作業で一番気を使っているのはウロコ取りなどの下処理です。もちろんどの種類のカレイもそうなのですが、ヒレグロはなおさらだといいます。下処理が不十分な干物を食べると、自分たちの仕事の意味を実感するほどの差が感じられるのだそうです。

もちろん下処理は手作業。以前機械化を試みたこともありました。しかし1枚1枚大きさや状態に微妙な差があるため、機械で一律に加工するよりも手仕事の方がきめ細かな処理ができるという結論に至ります。

加工には、他では考えられないほどふんだんに水を使っています。魚の処理も水で冷やしながら行います。それによって鮮度を保つことができるのだそうです。しかし2月などは、雪解け水で外気温よりも冷たいといいます。それでも品質のために手作業で処理を行っているそうです。

その水も、きれいに澄んでいることはもちろん、硬度にもこだわって立地を選びました。魚の加工には軟水が適しています。岩手県は硬水が出る場所が多いのですが、軟水が得られる場所を選んだのだそうです。

さらに、カレイの種類やその日の仕入れの個体によって作り方は日々微調整しています。大きさや脂の乗り方などによって塩味の付き方が変わるため、立て塩(塩水)・振り塩(粒塩)を使い分けています。

時々帰りたくなるふるさとのような味を目指して

そうして作られる宮古マルエイのカレイの干物。ぜひカレイ好きの方に食べてもらいたいと考えています。実際に、食べてみたら美味しかったと知人に紹介してくれる方も多いのだそう。

干物や魚を食べ慣れた年配のファンが多めで、昔よく食べていたので懐かしい、という声も多く寄せられています。しかし若い層の間でも、食べてみたら美味しかったと評判になっています。同社の干物は値段もお手頃なので、誰にでも手の届きやすい商品ばかりです。魚を食べる入口になればいいとも考えています。

リピーターも多く、北海道から沖縄まで日本全国に広がっています。インターネットでの販売を始めた直後からずっとお付き合いのあるお客さんや、年間20回以上注文がある人もいるそうです。

人を惹きつけるのは、何と言ってもその優しい味。忙しいときに食べると疲れが取れるような、優しく美味しい味がカレイの一番の魅力だそうです。

カレイの種類は100種以上あり、味も種類によって全然違います。同じカレイでも干物にするのに気を遣うことは無限大。知れば知るほど奥深いといいます。見た目もいろいろな顔をしていてかわいいんですよ、とも。

カレイのほかのものまで何でもは器用にできないと、「大いなるマンネリ」を目指しているといいます。いつもそばにあるもので、たまに無性に食べたくなるような干物作りを目指しているのだそうです。時々帰りたくなるふるさとになったらいいと考えています。

今回ご紹介した企業
有限会社 宮古マルエイ (岩手県宮古市)

東日本唯一のカレイの干物専門店。盛岡市の東に位置し、青の洞窟や浄土ヶ浜など美しい海と、遠野物語にも登場する霊峰・早池峰山を擁する宮古市にあります。ていねいな下処理と厳格な温度管理による品質の高さが自慢。魚を美味しく食べてもらうため、いろいろな食べ方の提案や干物以外の商品も展開中です。

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